日常青春奮闘記
雲雀(vsランボ)×ツナ
あからさまに部屋の空気が違っている。
いや、その、臭いとか、部屋が散らかっているとかそんなんじゃなくて。
何で、ここにいるんですか、この人――!
「解けたの?」
しかも、そんな普通に会話されるとびっくりしちゃうんですけどっ!!
綺麗な顔がこっちを見ている。
すっごく整った顔だと思う。
切れ長の目とか、クールな雰囲気とか、薄い口唇とか。
先日同じクラスの女の子がカッコイイとか言っていたなぁ。
だけど、怖いんだって。
「そ、その、ヒバリさん……」
「なに?」
「何でここに?」
――いるんです?
と聞けたのはかれこれ彼が自分の部屋に来てから1時間は経った後だ。
あー、情けないぞ、オレ。
ヒバリさんが面白そうに口端を上げる。
何となく嫌な予感にオレの身体は無意識に逃げた。
「僕は赤ん坊に君に勉強を教えてくれって頼まれたんだけど」
「そ、それなら、獄寺君がいるじゃないですか!」
獄寺くんは確かに教えるのが苦手だけど、まったく理解できないわけじゃない。
………………多分、だけど。
オレの抵抗に、ヒバリさんの口端が更に上がる。今度は不吉なソレだ。
たとえるなら、蛇に睨まれた蛙ってやつだ。
オレ何か言いましたか!
急変する不機嫌な顔が寄せられる。
「綱吉は」
「は、はいっ」
「僕じゃ不満なのかい?」
そ、そんな滅相もございません!!!
両手を全力で振れば、ヒバリさんの顔が更に寄せられた。
鼻と鼻が擦れる。
間近で見ても本当に綺麗な顔だ。
ディーノさんはかっこいいけど、そういうのじゃなくて、目が離せないというか。
心臓がドキドキする。
擦れた鼻がどうしてか熱い。
しなやかな指先が伸びて、オレの髪に触れた。
「なら、ここにいる理由が不満?」
……ヒバリさんがここにいる理由?
リボーンに勉強を教えててくれと頼まれたんじゃ。
それとも、他の目的があるのだろうか。
漆黒の瞳と視線が合う。
ヒバリさんんのそれは、こっちがびっくりするほど真っ直ぐだ。
「綱吉は僕ともっとすごいことしたいの?」」
――もっと、すごいこと?
甘く甘く囁かれる。
謎かけのような言葉に惑わされるままに、ヒバリさんの顔が近くなって。
ぶつかった鼻が僅かにつぶれて、吐息が混ざり合って。
あ、ヒバリさんの口唇、オレより色が赤いや。
って、ちょ、ちょっと、何、この状況……。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
――その時、大きな扉の開く音が響いた。
「えっ? ラ、ランボっ!!!?」
オレの部屋の扉を全開にし、見慣れたもシルエットが入り込んでくる。
黒いもじゃもじゃは、曲がることを知らない直線でオレのところに向かってきた。
「ど、どうしたんだ、ランボ、何かあったのか?」
泣きじゃくるランボを膝の上で受け止める。
珍しくしがみつくようにして、小さな手で両足に抱き付かれた。
その光景に、ヒバリさんの気配が離れていく。
少しだけオレはホッとした。
あのままじゃ……
って、何を考えているんだ、オレは!!
『キスするみたいだった、なんて。』
「ツナ、うわぁぁぁぁ」
「あぁ、もう、ランボ、本当にどうしたんだよっ!」
ヒバリさんに奪われ掛けた意識が、現実に引き戻される。
泣き止まない少年にヒバリさんが冷たい視線を流した。
「ひぃっ」
ランボが息を呑む。
それでも、ランボはどうしてかオレの膝の上からはどこうとはしなかった。
逆にヒバリさんを睨みつけるなんて。
ランボ、本当にどうしたんだよ……。
ヒバリさんが大げさに溜息を吐く。
立ち上がると、オレとランボを見下ろした。
「ねぇ、君がどれだけ子供なのか知らないけど。
泣いて気を引くことしかできないのなら、高望みなんかやめたら。
子供には十分すぎるほどのおもちゃだと思うよ」
「……ヒバリさん?」
また、謎かけのような言葉だ。
それっきり、、まるで興味を無くしたように視線が逸らされる。
ふんわりと黒い学ランが揺れた。
何度も見てきたその背中、だけど今は少しだけ寂しいと感じてしまう。
さっきまで怖いと思っていたはずなのに。
振り向いてくれないかな。
そうしたら、さっきからの謎掛けも少しだけ理解できるかもしれないのに。
少しだけ、ヒバリさんを理解できるかもしれないのに。
そんなことを考えていたら、ヒバリさんがくるっと振り返った。
――っ!!!!
何だか、こっちの方が慌ててしまう。
思わず壁に後頭部をぶつければ、さすがにヒバリさんも驚いたんだと思う。
少しだけその切れ長の目がまんまるになった。
「何してるの?」
「いえ、その、……何でもないです」
オレだって、自分が何をしているのか判らないのに、説明なんてムリだ。
「変な子だね」
君もその子供も。
ヒバリさんの口端がふんわりと上がるのに、オレは思わず見蕩れてしまう。
ヒバリさんの笑顔が、優しい、だなんて。
「でも、その子供に免じて今日は止めてあげる」
――だから、これから覚悟してよ。
なんて囁きを残して、ヒバリさんは消えていった。
思わず息が漏れる。
緊張していた空気が拡散するかのようだった。
オレはさっき自分の頭をぶつけた壁に、そっともたれかかる。
膝の上の温もりは愛しいけど、何だかどっと疲れたよ。
ランボの泣き出しそうな目と、視線がぶつかる。
あぁ、また、、そんなにぐしゃぐしゃな顔をして。
苦笑して、オレはその柔らかい頬を両手で包んであげた。
「ランボ~今日は何なんだよ~。ヒバリさんもなんかよく判らないしなー」
「ランボ、が……ま……ん」
「んー、どうした」
「ランボさんがんばるから……もっとがんばるから……」
いったい何を頑張るのつもりなのか。
泣いてるかと思えば、ヒバリさんにつっかかっていくし。
今日のランボは変だ。
ヒバリさんも。
それに……、オレも。
近かったよなぁ。ヒバリさん。
怖いのに、それ以上にドキドキしてるよ。
少年は、男の消えた窓を見上げた。
真っ青な空には白い雲が浮かんでいる。
両手を翳せば、指の間から覗く白いそれがゆったりと優雅に流れていた。
まるでヒバリさんのようだ。
というか。
ヒバリさーん、オレの家の玄関は窓じゃありませんよー。
なんて、思ってみるのだった。
おしまい。
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いつでも、子供相手でも、全力投球ヒバリさん。独占欲すごそうなのです。

家庭教師(1)













































