March 15, 2009

日常青春奮闘記

雲雀(vsランボ)×ツナ



あからさまに部屋の空気が違っている。
いや、その、臭いとか、部屋が散らかっているとかそんなんじゃなくて。

何で、ここにいるんですか、この人――!

「解けたの?」

しかも、そんな普通に会話されるとびっくりしちゃうんですけどっ!!

綺麗な顔がこっちを見ている。
すっごく整った顔だと思う。
切れ長の目とか、クールな雰囲気とか、薄い口唇とか。
先日同じクラスの女の子がカッコイイとか言っていたなぁ。
だけど、怖いんだって。

「そ、その、ヒバリさん……」
「なに?」
「何でここに?」

――いるんです?
と聞けたのはかれこれ彼が自分の部屋に来てから1時間は経った後だ。
あー、情けないぞ、オレ。

ヒバリさんが面白そうに口端を上げる。
何となく嫌な予感にオレの身体は無意識に逃げた。

「僕は赤ん坊に君に勉強を教えてくれって頼まれたんだけど」
「そ、それなら、獄寺君がいるじゃないですか!」

獄寺くんは確かに教えるのが苦手だけど、まったく理解できないわけじゃない。
………………多分、だけど。

オレの抵抗に、ヒバリさんの口端が更に上がる。今度は不吉なソレだ。
たとえるなら、蛇に睨まれた蛙ってやつだ。

オレ何か言いましたか!

急変する不機嫌な顔が寄せられる。

「綱吉は」
「は、はいっ」
「僕じゃ不満なのかい?」

そ、そんな滅相もございません!!!

両手を全力で振れば、ヒバリさんの顔が更に寄せられた。
鼻と鼻が擦れる。

間近で見ても本当に綺麗な顔だ。
ディーノさんはかっこいいけど、そういうのじゃなくて、目が離せないというか。

心臓がドキドキする。
擦れた鼻がどうしてか熱い。

しなやかな指先が伸びて、オレの髪に触れた。

「なら、ここにいる理由が不満?」

……ヒバリさんがここにいる理由?
リボーンに勉強を教えててくれと頼まれたんじゃ。
それとも、他の目的があるのだろうか。

漆黒の瞳と視線が合う。
ヒバリさんんのそれは、こっちがびっくりするほど真っ直ぐだ。

「綱吉は僕ともっとすごいことしたいの?」」

――もっと、すごいこと?

甘く甘く囁かれる。

謎かけのような言葉に惑わされるままに、ヒバリさんの顔が近くなって。
ぶつかった鼻が僅かにつぶれて、吐息が混ざり合って。
あ、ヒバリさんの口唇、オレより色が赤いや。

って、ちょ、ちょっと、何、この状況……。


「うわぁぁぁぁぁっ!」


――その時、大きな扉の開く音が響いた。

「えっ? ラ、ランボっ!!!?」

オレの部屋の扉を全開にし、見慣れたもシルエットが入り込んでくる。
黒いもじゃもじゃは、曲がることを知らない直線でオレのところに向かってきた。

「ど、どうしたんだ、ランボ、何かあったのか?」

泣きじゃくるランボを膝の上で受け止める。
珍しくしがみつくようにして、小さな手で両足に抱き付かれた。

その光景に、ヒバリさんの気配が離れていく。
少しだけオレはホッとした。
あのままじゃ……

って、何を考えているんだ、オレは!!


『キスするみたいだった、なんて。』


「ツナ、うわぁぁぁぁ」
「あぁ、もう、ランボ、本当にどうしたんだよっ!」

ヒバリさんに奪われ掛けた意識が、現実に引き戻される。
泣き止まない少年にヒバリさんが冷たい視線を流した。

「ひぃっ」

ランボが息を呑む。
それでも、ランボはどうしてかオレの膝の上からはどこうとはしなかった。
逆にヒバリさんを睨みつけるなんて。

ランボ、本当にどうしたんだよ……。

ヒバリさんが大げさに溜息を吐く。
立ち上がると、オレとランボを見下ろした。

「ねぇ、君がどれだけ子供なのか知らないけど。
泣いて気を引くことしかできないのなら、高望みなんかやめたら。
子供には十分すぎるほどのおもちゃだと思うよ」
「……ヒバリさん?」

また、謎かけのような言葉だ。
それっきり、、まるで興味を無くしたように視線が逸らされる。
ふんわりと黒い学ランが揺れた。

何度も見てきたその背中、だけど今は少しだけ寂しいと感じてしまう。
さっきまで怖いと思っていたはずなのに。

振り向いてくれないかな。

そうしたら、さっきからの謎掛けも少しだけ理解できるかもしれないのに。
少しだけ、ヒバリさんを理解できるかもしれないのに。

そんなことを考えていたら、ヒバリさんがくるっと振り返った。

――っ!!!!

何だか、こっちの方が慌ててしまう。
思わず壁に後頭部をぶつければ、さすがにヒバリさんも驚いたんだと思う。
少しだけその切れ長の目がまんまるになった。

「何してるの?」
「いえ、その、……何でもないです」

オレだって、自分が何をしているのか判らないのに、説明なんてムリだ。

「変な子だね」

君もその子供も。

ヒバリさんの口端がふんわりと上がるのに、オレは思わず見蕩れてしまう。
ヒバリさんの笑顔が、優しい、だなんて。

「でも、その子供に免じて今日は止めてあげる」

――だから、これから覚悟してよ。
なんて囁きを残して、ヒバリさんは消えていった。

思わず息が漏れる。
緊張していた空気が拡散するかのようだった。

オレはさっき自分の頭をぶつけた壁に、そっともたれかかる。
膝の上の温もりは愛しいけど、何だかどっと疲れたよ。
ランボの泣き出しそうな目と、視線がぶつかる。

あぁ、また、、そんなにぐしゃぐしゃな顔をして。

苦笑して、オレはその柔らかい頬を両手で包んであげた。

「ランボ~今日は何なんだよ~。ヒバリさんもなんかよく判らないしなー」
「ランボ、が……ま……ん」
「んー、どうした」
「ランボさんがんばるから……もっとがんばるから……」

いったい何を頑張るのつもりなのか。
泣いてるかと思えば、ヒバリさんにつっかかっていくし。
今日のランボは変だ。
ヒバリさんも。


それに……、オレも。


近かったよなぁ。ヒバリさん。
怖いのに、それ以上にドキドキしてるよ。


少年は、男の消えた窓を見上げた。
真っ青な空には白い雲が浮かんでいる。
両手を翳せば、指の間から覗く白いそれがゆったりと優雅に流れていた。


まるでヒバリさんのようだ。


というか。
ヒバリさーん、オレの家の玄関は窓じゃありませんよー。
なんて、思ってみるのだった。


おしまい。
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いつでも、子供相手でも、全力投球ヒバリさん。独占欲すごそうなのです。

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Personal Category: 家庭教師 Topic: creation / literature / ghost-story
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